独自の緊急事態宣言が発令され、人影がまばらな繁華街=山形市香澄町で2021年3月24日午後9時、岡崎大輔撮影(画像の一部を加工しています) 新型コロナウイルス感染拡大に伴って山形市に独自の緊急事態宣言(4月11日まで)が発令され、飲食店を対象にした営業時間の短縮要請が27日始まった。県内で初めて感染者が確認されてから1年。同市中心部の繁華街では、約3割の店が廃業や休業に追い込まれた。光を失った街から客引きや酔客の姿は消えていた。【岡崎大輔、藤村元大】
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山形市香澄町。JR山形駅前に広がる同市最大の繁華街の一つだが、飲食店は要請を受け入れたり、宣言期間中の休業を決めたりして看板の灯はともらず、人影はまばら。2020年4月、クラスター(感染者集団)となった飲食店が入居していた4階建てビルは他店舗も全て閉店。ビル入り口の門は閉ざされたままだ。「陰で『コロナ通り』なんていう人もいて、つらいよね」。業界関係者は力なくつぶやいた。
同駅前の185店舗が加盟する「山形駅前はながさ通り飲食店組合」によると、20年3月末は210店舗が加盟していたが、この1年間で25店舗が廃業した。他に25店舗が当面休業だという。関係者は「出入りが激しい業界だが、新たな出店がないのは異常な状態だ」と説明する。
組合理事長の酒井貞昭さん(56)が経営する和食店「酒菜一」はこの数日間で、二十数件の予約が全てキャンセルになった。時短要請で、ラストオーダーを1時間半早めて午後8時に変更する。酒井さんは「(要請に関する)ガイドラインがあれば、あらかじめ構えて準備もできるが、どうにもならない」と険しい表情だ。
関係者は、大手ビール会社には、100個単位でサーバーの回収依頼があったようだと明かし、飲食業界を巡る環境は悪化の一途をたどっている。
時短開始を待たず、25日から休業しているバーの女性経営者(47)は「看板の明かりをつけるだけで、白い目を向けられている気がする」。ダイニングバーを経営する男性(46)は「最近、売り上げが徐々に回復傾向にあった矢先の時短。不安しかない」と肩を落とした。
◇<新型コロナを巡る県内の主な経緯>
【2020年】
3月31日 県内で初の感染者確認を公表
4月16日 飲食店の夜間営業の自粛や映画館、娯楽施設の休業などの要請を決定
25日 県が県境付近で来県者に対し、独自の検温を本格実施
7月 8日 初めて感染者の死亡を確認
【2021年】
3月22日 県と山形市が共同で独自に同市に4月11日まで緊急事態宣言を発令
24日 県と山形市が同市の飲食店に対し、27日から営業時間の短縮を要請
25日 1日当たり過去最高49人の感染を確認